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オートクレーブ、その位置付けと歴史

この記事のサマリー

滅菌には様々な方法があり、対象物の材質や特性に応じて使い分けられる。代表的な方法には、オートクレーブ滅菌、乾熱滅菌、濾過滅菌、ガス滅菌、火炎滅菌がある。 今回は、ライフサイエンス分野で多用されるオートクレーブについて、その用途、方法、歴史などを調べてみた。

「ピペットの歴史と進化」に続いて、今回はオートクレーブについてです。

 オートクレーブとその他の滅菌。多様な方法と用途

 皆さんも日々の研究において、オートクレーブ滅菌をされていると思いますが、そもそも「滅菌」には、様々な方法があります。そして対象物の材質や耐久性、分子構造、組成によって最適な滅菌方法がとられ、下記のように使い分けられます。

●オートクレーブ滅菌(121℃ 15分以上)
 PP製チューブ、チップ、ピペッター
●乾熱滅菌
 ガラス機器
●濾過滅菌
 血清やタンパク質
●ガス滅菌
 熱に弱いプラスチック(PSやPE)製品
●火炎滅菌
 白金耳

我々の製造する製品の多くは、オートクレーブ滅菌が採用されることが多いです。

オートクレーブのプロセス

具体的なオートクレーブのプロセスについてですが、オートクレーブ窯内部を飽和蒸気によって高温高圧にすることで、バイオの産業では滅菌作業に使用され、化学系の分野では、特殊な化学反応や抽出・析出を行う際にも用いられることもあります。滅菌の条件として121℃で15分以上オートクレーブすることが基準として定められています。

オートクレーブの起源と歴史

 まず、この「オートクレーブ」という言葉の語源について調べてみると、ギリシャ語の”auto-””clavis”が合わさった造語のようで、それぞれ「自動」と「閉じる」の意味を持ちます。てっきり言葉自体に滅菌などの意味が含まれていると予想していたので、想定外の答えです。

オートクレーブの名前の由来

 では、なぜこのような名前が付けられたのでしょうか。オートクレーブという名前が付けられたのは実は、滅菌用途ではなく調理器具としての圧力釜でした。オートクレーブの歴史を振り返るにあたって、どうも圧力鍋の歴史を振り返る必要がありそうです。

圧力鍋の発明と進化

 煮込み料理等で骨を柔らかくするために、圧力をかけながら加熱調理するアイデアを思い付いた、フランス人の発明家のドニ・パパンはsteam digesterとして圧力鍋の原型のようなものを王立協会(いわば学会や博覧会のようなもの)で発表します。骨までトロトロになったスープを配ったのでしょうか。

オートクレーブ窯の誕生

 その後1820年に言語学者兼発明家のピエール・アレクサンドル・ルマールが、安全面を改善し、自動で(auto)閉まる(clavis)ようにしたことから、英語で言うところのautolock(オートロック)という意味のオートクレーブ窯を発表しました。ちなみに、この時、パパンが最初にsteam digesterを発明してから150年が経過していますが、未だに滅菌用途や特殊な化学反応や抽出・析出用途は一切なく、調理鍋としてのオートクレーブ窯でした。

オートクレーブ滅菌の始まり

 その後さらに50年以上が経過してから、微生物学者のシャルル=シャンバーランが、自らの研究の中、仮説を証明するため滅菌状態が必要になり、滅菌の方法として煮沸消毒や、乾熱滅菌ではないアプローチを試している中で、圧力鍋を応用したのが、現代のオートクレーブ滅菌の始まりだそうです。

ワトソンのオートクレーバブル製品

 ワトソンのポリカーボネート製のラックは、繰り返しオートクレーブをかけても変形に強く、チップを使い終わった後も、交換プレートや、新しいプレートを入れて、バルクチップを充填してから、オートクレーブ滅菌をして、ご使用いただけます。

 みなさんも200年前、骨まで煮込んだ美味しいスープを国民に食べて欲しいという熱い思いを持って圧力釜を発明し、王立協会で発表したパパンに思いをはせて、ワトソンのオートクレーバブルピペッターを、オートクレーブにかけてみてはいかがでしょう。

出典元URL

https://www.cytivalifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/cell_story/119.html

https://www.wdb.com/kenq/dictionary/autoclave